忍術の三病は、一に恐怖、二に敵を軽んず、三に思案過ごす。この三つを去りて、電光のごとく入る事速やかなり。
──『万川集海』
第一に、敵を恐れることにより心が萎縮し、動揺して取り乱し、日頃習って工夫したことも忘れてしまい、手足が震え、顔色が変わり、あるいは話し方が尋常でないことによって見とがめられて、見つかってしまう。
第二に、敵を軽んじ相手を愚かに思うことによって、陰謀が浅くなってしまう。浮ついたやり方によって事を仕損じることがあるものである。
第三に、あまりに大切に考えすぎ、よけいなことまで考えると、疑わなくてよいことまで疑うようになってかえって危険が多くなってしまい、意思が決定できず、しばしば迷いが生じて失敗することがあるのである。
ゆえに三病を取り除くことで、謀計を深くし、その機に臨んで速やかに侵入することができる。恐れず臆病心をもたなければ、電光のように侵入できるものである。