リーヤ君安らかに
◇
18歳
人間でいうと88歳だとか。
◇
こんなにも悲しい。
大往生で。老衰で。
ちゃんと家で眠ってくれた。
歯がたくさん抜けて数本しか残ってなかった。
黒猫なのに白髪で真っ黒じゃなくなった。
どんどん体が細くなっていった。
背中を優しく撫でても痛がるほど骨が弱くなった。
ジャンプしなくなった。
動きが少なくなった。
ごくたまにしか庭に出なくなった。
心なしか毛が元気ない。
それでも顔は元気で。
ひとつしかない目はキラキラしていて。
元気ににゃーんて言う。
かわいいかわいいリーヤ君。
猫アレルギーだから、私は満足に撫でてあげられなかったけど、月に一度は撫でくりまわして、終わるとすぐ手を洗いに行った。
家族はたくさん撫でたり抱っこしてあげてくれていた。
お父さんとたくさん添い寝してた。
お母さんとも添い寝してた。
勉強中のお母さんの目の前に座って寝てた。
食べ物にうるさかった。
チュールはおじいちゃんだからかほどほどで、スッゲー好き!って感じではなかった。
とてもびびりで、暗いところと高いところには行きたがらなかった。
猫トイレでトイレできなくて、玄関を勝手にトイレにしてた。
お風呂が嫌いだった。
ノミの薬をさされると、痛いのか悲しい声で泣いていた。
高いところが怖いのに、ノミの薬をさされた日は、必ず泣きながらロフトベッドに上がって抱きしめてといってきた。
冬は膝の上に乗って暖を取ってた。
トイレに行くの我慢した。
足を動かすの我慢した。
暖をとるときくらいしかきてくれないからその時を楽しんだ。
毛がぬけるから猫用のタオルはいつもそばにあった。
使わなくなった大きな椅子がリーヤ君のベットだった。
猫用のベット買っても、猫用の箱みたいなの買っても、大きな椅子の方が好きみたいで無駄になった。
リーヤ君は小さい頃に顔中がぐじゅぐじゅでお母さんと弟に拾われてきた。
ぐじゅぐじゅ過ぎて、長くはないだろうとお医者に言われた。
お母さんが毎日丁寧に目薬して膿を拭き取った。
薬をあげてた。
ミルクをあげてた。
すぐ亡くなるかもしれないけど、お母さんは毎日丁寧にやってた。
片目は戻らず、摘出することになったけど、もう片方は見えるようになった。
死ぬかもしれないと言われたのに生きながらえた。
片目の景色しか知らないリーヤ君は元気に育った。
そんな彼は18歳まで生きる事ができて、
老衰で亡くなった。
最後までうちにいてくれた。
私が小さい頃から猫は家にいた。
お母さんが猫好きで。
リーヤ君の先輩のラムちゃんは、
突然いなくなった。
だから死に目に会えなかった。
だから実感がなかった。
どこかで亡くなったのか、
どこかで生きているのか…。
賢いから迷子になっても必ず戻ってきた。
帰れない時はひたすら鳴いて私達を呼んだ。
でもその日は、
あぁ。ついにこの日が来たねって。
家族は探しに行かなかった。
ラムちゃんの時は幼かった事もあるかもしれないけど、泣かなかった気がする。
こんなにも悲しい。
大好きだよ。
ありがとうございました。